旅人と老人のお話です。ある町に、一人の旅人がやってきました。町の入り口には門があり、一人の老人が座っていました。旅人は聞きます。
「おじいさん、この町はどんな町なんだい？」
おじいさんは、その質問には答えず、逆にこう聞きます。
「旅人よ。あなたが今までいた町はどんな町でしたか？」
すると、旅人はこう答えます。
「ああ、嫌な人ばかりで、ろくな町じゃなかったよ。だから旅に出たのさ」
おじいさんは、残念そうな顔で、旅人に言いました。
「そうですか。この町も嫌な人ばかりで、ろくな町ではありませんよ」

別の日に、ほかの旅人がやってきました。
「おじいさん、この町はいったいどんな町ですか？」
おじいさんは、前と同じように聞きます。
「あなたが前にいたのは、どんな町でしたか？」
すると、旅人はこう答えました。「みんな親切で誰とでも仲よくあいさつできる素晴らしい町でした」。
すると、おじいさんは言います。
「この町もそれと変わらない。いや、それ以上の素晴らしい町ですよ」。

なぜ、おじいさんの答えは正反対だったのでしょう？　
それは、環境は「その人の心が決める」からです。
私たちは、環境をよりよくするために学んでいるともいえます。環境に左右されるのではなく、環境をつくれる人間になりたいですね。

「矢内芳則語録集」304ページより